必定てっきり)” の例文
はたせる哉、鴎外は必定てっきり私が自己吹聴のため、ことさらに他人の短と自家の長とを対比して書いたものと推断して、怫然むっとしたものと見える。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ええ、それで必定てっきり誘拐かどわかされたという見込でな。僕が探偵の御用を帯びて、所々方々と捜している処だ。「御道理ごもっとも。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「僕も必定てっきり君のお父さんと思ったものだから、今更厭とも言えず診察を受けたのさ。親子は斯うも似るものかと感心していたが、似ている筈さ、当人だもの」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
昨日きのうからむずかしいから、お前さんの所へ知らせにくとな、今朝早く成田へ立ったと云うことだから、こいつア必定てっきりお百度だろうとあとから往こうか知らんと思ったが
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こりゃあ必定てっきり、船の中に見込まれた人があるのだ、その見込まれたというのはほかじゃねえ、船ん中でたった一人の女のお客様を、海の神様がそねんでいたずらをなさるに違えねえのだから
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
或人が不斗ふと尋ねると、都々逸どどいつ端唄はうたから甚句じんくカッポレのチリカラカッポウ大陽気おおようきだったので、必定てっきりお客を呼んでの大酒宴おおさかもり真最中まっさいちゅうと、しばらく戸外おもて佇立たちどまって躊躇ちゅうちょしていたが
今飛込んだ娘があるというから、実は自分の娘と思って慌てゝ船頭に頼んで引揚げて貰った処が、お前さんまア歳頃といい私共の娘と同じなりの小紋の紋附帯も矢張やっぱり紫繻子必定てっきり我子わがこと思いましたが
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)