御軍みいくさ)” の例文
ここにき出して斬りはふりき。かれ其地そこを宇陀の血原といふ。然してその弟宇迦斯おとうかしが獻れる大饗おほみあへをば、悉にその御軍みいくさに賜ひき。この時、御歌よみしたまひしく
「こは、思いがけぬ御諚ごじょうにござりまする。人の沙汰やら存じませぬが、何で将帥しょうすいのよりごのみなどいたしましょう。すべては、御軍みいくさの下、この正成もみかどの一兵でしかございませぬ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて此御時みちのく越後の蝦夷エミシらがソムきぬれば、うての使を遣さる、その御軍みいくさの手ならしを京にてあるに、鼓吹のこゑ鞆の音など(弓弦のともにあたりて鳴音也)かしかましきを聞し召て
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
雪ふかき荒野の上に御軍みいくさの臥すと思へば我も寒けし
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
御軍みいくさの跡を追はまし
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
よく人心収攬しゅうらんのご器量があるものなれば、さきに鎌倉を陥し、また勅宣の御軍みいくさをひきいて治平のすいにあたりながら、今日まで天下の諸族を、いまだにこんな支離滅裂にはしておきますまい。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「正成の存念を、直言つかまつるなれば、なにとぞ、いまを以て、御軍みいくさをやめ、公武一体のすがたをお取りあらせられ、ひとまず、すべてを御政事にせられたしとねがう次第にございまする」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんで天下の目に、さようなことにうつりましょうか。御軍みいくさは兵庫に大捷をはくしており、尊氏は遠く筑紫つくしへ落ちのびている敗軍の人。……さればこそまた、いまが絶好なときでもございまする。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)