御手際おてぎわ)” の例文
まずあなたの特色として第一に私の眼に映ったのは、ゆたかな情緒をこまやかにしかもきりかすみのように、ぼうっと写し出す御手際おてぎわです。
木下杢太郎『唐草表紙』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「なるほど、少し御手際おてぎわが落ちますね。あの表面は超絶的ちょうぜつてき曲線きょくせんでとうてい普通のファンクションではあらわせないです」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのくらいに私が演説の専門家になっていれば訳はありませんが私の御手際おてぎわはそれほど専門的に発達していない。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
成程なるほど吾々凡人より高く一隻眼いっせきがんを具して居ないとあんな御手際おてぎわ覚束おぼつかない。ただ此点だけでも敬服の至りである。
高浜虚子著『鶏頭』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
時代後れの頑物がんぶつ——まあわからずやの張本ちょうほん烏金からすがね長範先生ちょうはんせんせいくらいのものだから、黙って御手際おてぎわを拝見していればいいが——僕の未来記はそんな当座間に合せの小問題じゃない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だからそれがまとまらない上に、筋が通らないとか、又は主人公の哲学観などが露骨に出てくると、一方が一方を殺して、少し平生の御手際おてぎわに似合わない段違いのものが出来はしまいかと疑われます。
木下杢太郎『唐草表紙』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
唯面白くないといっても分らぬから、訳をいわなくちゃならんが、どれを見てもノッペリしている。ノッペリしているという意味は御手際おてぎわが好いというので、めているのかといえば、そうではない。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「何とも云えませんね。煙草の御手際おてぎわじゃ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「どうせ僕の御手際おてぎわじゃうまく行かない」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)