御前ごぜ)” の例文
それで諸君が東京のうし御前ごぜってごらんなさると立派な花崗石かこうせきで伊藤博文さんが書いた「天下之糸平」という碑が建っております。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
表むきは何処どこまでも田舎書生の厄介者が舞ひこみて御世話に相成るといふこしらへでなくては第一に伯母御前ごぜが御機嫌むづかし
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いやいや、尼御前ごぜのお身なればこそ、かえって都合がよいのだ。大坂表の御命令とあれば、いやとも仰せられまい」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただし曾良そら附句つけくに描かれた遊女が、私は盲であったろうと思っているわけではない。まだあの頃にはこの一種の御前ごぜ以外にも、色々の上﨟じょうろうが村をあるいていたらしいのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さま/″\に掻き口説きますので、いや、私だって御前ごぜたちを疎んじるのではないが、前世の因果が報いて来たのか、今度こそはと見込みをつけて懸かる仕事がみんな外れてしまうものだから
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その語自身にも巡歴という語感があったらしいが、別にまたマハリゾレという名もあったように聞いた。関東の御前ごぜたちと異なっているのは、眼が見えることだけというくらいによく似ている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ついでの事に問罪所のほうへ自首して出た常磐御前ごぜも放してやれ。ただ子たちはみな男だからな、寺入り申しつけるがいい。——乳のみ児は、すぐもぎ離したら泣き死のう。百日ほども母の手に猶予ゆうよ
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
良家の娘たちの不幸にしてめいを失った者は、親が嫁入のような支度を調えて、御前ごぜの家へ送り込んだ。それが年﨟ねんろうを積んでよい地位に経のぼって行くことは、尼寺などと異なるところがなかった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「何も知らず、母御前ごぜと同じように化粧して」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)