後添のちぞひ)” の例文
後添のちぞひのお常にいやな眼で見られながら、——それでもようやく伊勢屋の旦那に逢ひ、言ふだけの事は皆んな言つてしまひました。
実際あのとしでゐて、あのやうに若い美しい後添のちぞひを貰ふ事の出来たのは、ほかならぬ神様のお蔭で、幾度お礼を言つたつて、言ひ過ぎるといふ訳のものではない。
岩城いはきさんが某氏の後添のちぞひにあのかたを世話しやうかと思ふと云つておいでになつた時に、私は滑稽なことを云ふ人であると思つて笑つたのでしたが、あの時はあなたもそばにおいでになつて
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「越前屋の後添のちぞひの連れ子で、手代のやうに働いてゐる福松といふのが、昨夜兩國橋の上から大川へ投り込まれたんです」
そのゲイ爺さんは百一歳の時、十六人目の女房かないに亡くなられて、こつそり十七人目の後添のちぞひを貰はうとしたが、親類縁者の者に留立とめだてされて、ぶつ/\ぼやきながらやうやく思ひとまつたといふ事だ。
お樂と、お樂の後添のちぞひ、——死んだお淺とお菊には繼父けいふに當る彌助——の喜びはいふまでもありません。
「とても數へ切れるものぢやありません。兎も角、私は身を引きました。丸屋の後添のちぞひになるのは本望ですが、せがれの命はそれよりも大事です。三日前に旦那とは手を切りましたよ、親分」
「達者で暮せよ、後添のちぞひなんか搜す氣になるな、馬鹿奴」
「俵屋は金があり過ぎるよ、それに後添のちぞひの内儀——お春さんとか言つたね、あれは若過ぎるし、娘のお粂とお玉は綺麗過ぎる、もう一つ主人の孫右衞門は六十八といふ年で、病身で身動きも出來ないといふぢやないか」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
後添のちぞひになれとでも言ふのだらう」
銭形平次捕物控:180 罠 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)