後廻あとまわ)” の例文
併しついでだから、順序は逆になるが、虎狩は後廻あとまわしにして、その後の彼について、もう少し話して置こうと思う。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
お姉さんのお蔭で光ちゃん嫁に持つこと出来たら、夫婦のことやかい後廻あとまわしにしてもお姉さんのためはかります。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして後廻あとまわしにしているうちに、どんどん時間が経って、気がついたらもう汽車の時間が迫っていた。時を惜しむというのは、こういうことを言うのであろう。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
裁縫師は他の仕立物を後廻あとまわしにして裁縫にとりかかったが、期日が翌日の朝になっているので、その夜は一時近くまで仕事をして、やっと縫いあげたところで客があった。
娘の生霊 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
閑事と表記してあるのは、急を要する用事でも何んでも無いから、いそがしくなかったらひらいて読め、に心のかれる事でもあったら後廻あとまわしにしてよい、という注意である。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
が、ここにはかりに二つに分けて、その「じっと案じ入る」という方は後廻あとまわしとし、「じっと眺め入ること」について私の経験談の一つを実例としてお話ししてみようと思います。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「それでは、そのことは後廻あとまわしとして、博士。遊星植民説の生れた理由は?」
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「鈴岡も、書生流というのか、なんというのか、麹町や目黒にだけでなく、ご自分の親戚のおかた達にも、まるでもう、ごぶさただらけなんです。私が何か言うと、親戚は後廻あとまわしだ、と言って、それっきりなんですもの。」
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
Kを後廻あとまわしにするように見えたのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)