径庭けいてい)” の例文
世上有名な乾山の八ッ橋の絵とは径庭けいていありと言い切る者があるでしょうか。この菖蒲の絵も乾山筆と称してなんの不思議もありますまい。
古器観道楽 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
だから我々以前と我々以後とでは、文壇及それ以外の鑑賞家の氏に対する評価の大小に、径庭けいていがあつたのは已むを得ない。
あの頃の自分の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いと平凡に世を過したアレキサンドリヤの貧しい一靴工に比べて、天の照覧その功徳に径庭けいてい少しもなしと判ぜられた。
家を離るるときはその教則、風習なるの地といえども、擾乱誘惑の害なきあたわず。かつ良師良友といえども、その情その父母の訓育とはおのずか径庭けいていあり。
教育談 (新字新仮名) / 箕作秋坪(著)
日常の、生活の重しからいや応なしに、焙り出されるような考えと、この山崩れの直後に、人を囚にするような考えとは、何というはげしい径庭けいていのある事だろう。
その作者の頭脳の働くことは材料一切を頭の中からしぼり出した場合と決して径庭けいていはないのであります。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
他日諸子はこれにき、更により多くを知るであろう。現在としては既成宗教のドグマと、われ等の教義との間に、いかに多大の径庭けいていがあるかを明かにしたのをもって満足するとしょう。
魚市に喧囂けんがうせる小民、彼も亦た宇宙に対する運命に洩れざるなり、彼も亦た彼の部分を以て、宇宙を支配しつゝあるものなり、この観を以てすれば、王侯将相と彼との間に何の径庭けいていあらんや。
頑執妄排の弊 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
その原始的生活に於ては人類と他動物との間にさまでの径庭けいていなく、皆雑婚で、目迎え目送って相可あいかなりとすれば、直ちに相握手してはばからず、なんらその間に厳粛げんしゅくなる制限の存在せぬのであったが
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
だからちょっと見ると、ベラボーに嬉しい気のするものであるにはあるが、これは初心の間のことで、誰しも一応経験する径庭けいていであるまでだ。
古器観道楽 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
しかしながら月並とこの背景のある句という間には非常な径庭けいていがある。簡単に月並の句そのものの説明をしかたがたその差異を述べてみようならば、月並の句の方は作者の主観をむきだしに出す。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)