弗箱ドルばこ)” の例文
赤い浮標ブイのようにフラフラしているのに、片っ方の運転手は弗箱ドルばこみたいに重々しくて真四角い恰好をしているから、見かけだけでも頑固らしい。
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
政党、ことに××党にとってこの老人は文字どおりの弗箱ドルばこであったからして、大臣になったことは無いが、その巨大なる財力は常に到るところで物を言った。
仲々死なぬ彼奴 (新字新仮名) / 海野十三(著)
工人を指導した陳独秀が、いまでは南京総司令の策略によって彼の首が無産者の弗箱ドルばこに変わるのであった。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
はじめ有楽座が彼女を招いたおりの高給は、いまでは有楽座にとってはなんでもない額になってしまった。有楽座の弗箱ドルばこといわれるほど、呂昇が出れば満員つづきなのである。
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
珠運が一身二一添作にいちてんさくの五も六もなく出立しゅったつが徳と極るであろうが、人情の秤目はかりめかけては、魂の分銅ふんどう次第、三五さんごが十八にもなりて揚屋酒あげやざけ一猪口ひとちょく弗箱ドルばこより重く、色には目なし無二無三むざん
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その結果さすがに頑強を極めて居た東電(佐竹という人が社長で政友会の弗箱ドルばこであったとの説もある)も時勢に抗し難くとうとう大値下を為すのむを得ざるに至った、その時である
映画会社の弗箱ドルばことなっているのである。
脱出と回帰 (新字新仮名) / 中井正一(著)
機密費用の大弗箱ドルばこだよ。そこを洩れ出す巨万のお金が。マッタク博士のポケットの中へ。ソロリソロリと音さえ立てない。それかばかりかマッタク博士の。広い肩幅大きな胸には。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ハハハ。それはこっちから云う文句だ。貴様が金を持っている限り、俺は貴様を生かしておく必要があるんだ。俺はまだ自分の弗箱ドルばこに手を挟まれる程、耄碌もうろくしちゃいねえんだからな……ハハンだ」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)