引被ひきかつ)” の例文
このこがらし! 病む人の身をいかんする。ミリヤアドはきぬ深く引被ひきかつぐ。かくは予と高津とに寝よとてこそするなりけれ。
誓之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
兵馬は蒲団を引被ひきかつぎながら、格子の角に引かれる鑢のちいさな音を聞いていました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
子爵は庭に下立おりたちて、早くもカメラのおほひ引被ひきかつぎ、かれこれ位置を取りなどして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さばかり間遠まどほなりし逢瀬あふせなるか、言はでは裂けぬる胸の内か、かく有らではあきたらぬ恋中こひなかか、など思ふに就けて、彼はさすがに我身の今昔こんじやくに感無き能はず、枕を引入れ、夜着よぎ引被ひきかつぎて、寐返ねがへりたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)