引繰返ひつくりかへ)” の例文
はげまして宜々よし/\お節是からは御家老邸からうやしき駈込かけこんで藤八が命をまといま一度御願申て此公事を引繰返ひつくりかへさで置べきや然樣さうぢや/\と立上るを私もともに命を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其所そこかはが流れて、やなぎがあつて、古風ないへであつた。くろくなつた床柱とこばしらわきちがだなに、絹帽シルクハツト引繰返ひつくりかへしに、二つならべて置いて見て、代助は妙だなとつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さう言つちや済まないけれど、育てた恩も聞飽きてゐるわ。それを追繰返おつくりかへし、引繰返ひつくりかへし、悪体交あくたいまじりには、散々聴せて、了局しまひは口返答したと云つて足蹴あしげにする。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
持つてゐた本を引繰返ひつくりかへして見たが読む気にもならない。葉巻を出して尻尾を咬み切つて、頭の方を火鉢の佐倉に押附おつゝけて燃やす。周囲がひつそりとする。堀ばたの方の往来に足駄の音がする。
追儺 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)