引接いんじょう)” の例文
紫の雲の、本願寺の屋の棟にかかるのは引接いんじょうの果報ある善男善女でないと拝まれない。が紅の霞はその時節にここを通る鰯売いわしうり鯖売さばうりも誰知らないものはない。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
清閑の池亭のうち、仏前唱名しょうみょう間々あいあいに、筆を執って仏菩薩ぼさつ引接いんじょうけた善男善女の往迹おうじゃくを物しずかに記した保胤の旦暮あけくれは、如何に塵界じんかいを超脱した清浄三昧しょうじょうさんまいのものであったろうか。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
天才もここに引接いんじょうせられ、凡夫もまた摂取せられてしまう。浄土には位階はない。浄土の座は円輪なのである。上座下座はない。位階を想うのは、この世の立場で眺めるからに過ぎない。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)