引外ひきはず)” の例文
明智は暗の中で紋三の腕を握って合図をすると、板ばりの一部に手をかけて音のしない様に引外ひきはずした。ポッカリと四角な穴が開いて、薄い光が差して来た。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうした方が脅喝きょうかつに有利であったばかりでなく、そこを目星にして集中して来るその筋の手配りを、引外ひきはずし引外し仕事をした方が、遥かに安全である事を幾度となく
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
龜藏は逆筋斗さかとんぼうを打ってどぶの縁へ投げ付けられるを、左のほうから時藏相助が打ってかゝるを、孝助はヒラリとからだ引外ひきはずし、腰にさしたる真鍮巻の木刀で相助の尻のあたりをドンとつ。
取込とりこむ時引外ひきはずしたままの掛棹かけざおが、斜違はすかいに落ちていた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さもなくとも手堅い奴を口説き落して、何とかしてこちらに向かす。向いたら最後、こちらから引外ひきはずして逃げまわると、半玄人の悲しさには、青くなったり、赤くなったりして追っかけて来る。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)