かく)” の例文
昔の人は人に存するもの眸子ぼうしより良きはなしと云ったそうだが、なるほど人いずくんぞかくさんや、人間のうちで眼ほど活きている道具はない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またかくさんと欲する心を示すものは、目、口、鼻など頭の頂上より足の爪先つまさきに至るまで、一つとして我々の性質を現す機会とならぬものはない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
れの徳義とくぎは——「かくすよりあらはるゝはなし」——へれば——「外見ぐわいけんかざるな、いく體裁ていさいばかりつくろつても駄目だめだ、かはづぱりかはづさ」
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
孔子いわく「人いずくんぞかくさんや、人いずくんぞかくさんや」と。たぶんわれわれは隠すべき偉大なものが非常に少ないからであろう、些事さじに自己をあらわすことが多すぎて困る。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
これをかくさんとするも、これらの機関はほとんど裏切うらぎりするかのごとく、我々の心情を現すものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
またこれに関連して述べたいことは、弱点の末の末までかくし得ないことを心得れば大いに気が澄んで来る。「ひといずくんかくさんや」で、かくさんとする人はただ一人だがこれを見る人は幾千万人ある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)