廂間ひあはひ)” の例文
唯有とある小路の湯屋は仕舞を急ぎて、廂間ひあはひの下水口より噴出ふきいづる湯気は一団の白き雲を舞立てて、心地悪き微温ぬくもりの四方にあふるるとともに、垢臭あかくさき悪気のさかんほとばしるにへる綱引の車あり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
若党上野友次郎、松村金三郎の二人に、草履取ざうりとりが附いて供をしてゐる。たちまち一発の銃声が薄曇の日の重い空気を震動させて、とある町家の廂間ひあはひから、五六人の士が刀を抜き連れて出た。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
夏にでも成ると、土藏の廂間ひあはひから涼しい風の來るところへ御櫃おひつを持出して、その上から竹のすだれを掛けて置いても、まだそれでも暑さに蒸されて御櫃の臭氣にほひが御飯に移ることがあります。