差障さしさわ)” の例文
割れ目のところでカチカチと鳴りますが、先ずは大した差障さしさわりなく針が滑って、国府老人のわけの判らぬ遺言が始まります。
「今度は失敗談です。これは吉川君も安達君も関係がありますから、差障さしさわりのところは含んで置いて戴きます」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
従ってこの話は、黒田藩に起った事実を脚色したものであるが、しかし人名、町名と時代は差障さしさわりがあるから仮作にしておいた。あしからず諒恕りょうじょして頂きたい。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「政治上の差障さしさわりさえなければ、僕も喜んで話しますが——万一秘密の洩れた事が、山県公やまがたこうにでも知れて見給え。それこそ僕一人の迷惑ではありませんからね。」
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もしお身体にお差障さしさわりないようでしたら当分こちらへ来てみませんか。今年ことしは西洋人の別荘を借りています。私一人きりですからどうぞ御遠慮なくお出でください。
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
ここで俺が戸田家の家来たる兄に有様ありようを打明けてみたところで、別段差障さしさわりの生ずるようなこともあるまい。このたびの事は、親兄弟たりともいっさいらすまいという誓約はある。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
このていを見て神尾主膳は、ひそかに喜びました。二人をここへ移すことによって、自分の罪悪に差障さしさわりの来ないことを信ずるほどに、主膳はそれを見て取ることができたのでしょう。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)