巡錫じゅんしゃく)” の例文
明治三十九年五月三十日 大谷おおたに句仏くぶつ北海道巡錫じゅんしゃくの途次来訪を機とし、碧梧桐庵小集。会者、鳴雪、句仏、六花りっか、碧梧桐、乙字、碧童、松浜。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
何百年という昔、なにがしとやらいう高徳のひじり(聖)が巡錫じゅんしゃくして来たとき、村人たちがひじりを定住させようとして建てたものだという。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こうして五年のその間に、日本全国津々浦々を、光明優婆塞は巡錫じゅんしゃくした。そうして五年目の秋が来て、富士の裾野へ立ち帰った時、信徒一千と註されたところの富士教団が建設された。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
東福寺を出て諸国を巡錫じゅんしゃくし、乞われて、しばらく駿府すんぷの家人の第宅ていたくにいたが、義元の死後、内政ぶりもおもしろくないし、禅語に耳をかす者などは稀れなので、いつの頃か、そこを去り
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
巡錫じゅんしゃくの打ち合せなどを済ましたあと、しばらく雑談をしているうちに、老師から縁切寺えんきりでら由来ゆらいやら、時頼夫人の開基かいきの事やら、どうしてそんな尼寺へ住むようになった訳やら、いろいろ聞いた。
初秋の一日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ホ……それはまたにわかな、急に、ご巡錫じゅんしゃくでも思い立たれて」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)