峭立きったて)” の例文
市郎はある岩角に腰をかけて、用意の気注薬きつけぐすりふくんだ。足の下には清水が長く流れているが、屏風のような峭立きったての岩であるから、下へは容易に手がとどかぬ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼はなにとは無しに起きあがって、蝋燭をてらしつつ四辺あたりを見廻すと、四方しほうの壁は峭立きったての岩石であるが、所々にこぶのような突出とっしゅつの大岩があって、その岩の奥には更に暗い穴があるらしい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
上と下とて遥かに呼び合っていたが、何を云うにも屏風びょうぶのような峭立きったて懸崖けんがい幾丈いくじょう、下では徒爾いたずら瞰上みあげるばかりで、攀登よじのぼるべき足代あししろも無いには困った。其中そのうちに、上では気がいたらしい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)