岩崎いわさき)” の例文
車がようやく池の端に出ると葉子は右、左、と細い道筋の角々かどかどでさしずした。そして岩崎いわさきの屋敷裏にあたる小さな横町の曲がりかどで車を乗り捨てた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いざとなると容赦ようしゃ未練みれんもない代りには、人にって取り扱をかえるような軽薄な態度はすこしも見せない。岩崎いわさき三井みついを眼中に置かぬものは、いくらでもいる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
只今では岩崎いわさきさんがお買入れになりまして彼処あすこが御別荘になりましたが、以前まえには伊香保から榛名山はるなさんへ参詣いたしまするに、ふただけへ出ます新道しんみちが開けません時でございますから
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
構うことあ無えやナ、岩崎いわさきでも三井みついでもたたこわして酒の下物さかなにしてくれらあ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ああ岩崎いわさきまでお送り申すんだよ」
峠の手毬唄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
岩崎いわさきへいが冷酷にそびえている。あの塀へ頭をぶつけてこわしてやろうかと思う。時雨しぐれはいつかんで電車の停留所に五六人待っている。の高い黒紋付が蝙蝠傘こうもりを畳んで空を仰いでいた。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)