小為替こがわせ)” の例文
というのは、そのかみさんが小為替こがわせを金に替えるため、中通りの郵便局へいったところ、塩山家で貯金をしていることがわかったのだ。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私が生れて初めて原稿料というものを貰って自分で自分に驚いたのは「団栗」という小品に対して高浜さんから送られた小為替こがわせであった。
高浜さんと私 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
けさ雑誌社から送られて来たばかりの小為替こがわせを三枚、その封筒のまま二重廻しのポケットにねじ込み、外に出た。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
と、まるで自分が相談でも受けたようなませた書きぶりで手紙をよこし、そこには三十円の小為替こがわせが入っていた。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
また二円でも三円でもゆとりがあれば小為替こがわせにして送った。それでも安心とは思えなかった。吉田町の旧住所は、高島町何番地とかの、ぼくの知らない所に変っていた。
金額二十円の小為替こがわせが、都合七枚、新子らしく、便箋へ簡明に走り書がついている。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
... 縮め賃は小為替こがわせにて此方こなたより御送おんおくり可申上候もうしあぐべきそろとあるのさ」「なるほど迂濶うかつだな」と主人はおのれより迂濶なものの天下にある事を発見しておおいに満足のていに見える。やがて「それから、どうした」と聞く。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たしか二十円お借りしたと覚えて居りますが、小為替こがわせにて同封して置きましたから、よろしくお願い致します。私も「へちまの花」の印税がはいったばかりのところですからお金持であります。
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)