というのは、そのかみさんが小為替を金に替えるため、中通りの郵便局へいったところ、塩山家で貯金をしていることがわかったのだ。
私が生れて初めて原稿料というものを貰って自分で自分に驚いたのは「団栗」という小品に対して高浜さんから送られた小為替であった。
けさ雑誌社から送られて来たばかりの小為替を三枚、その封筒のまま二重廻しのポケットにねじ込み、外に出た。
と、まるで自分が相談でも受けたようなませた書きぶりで手紙をよこし、そこには三十円の小為替が入っていた。
また二円でも三円でもゆとりがあれば小為替にして送った。それでも安心とは思えなかった。吉田町の旧住所は、高島町何番地とかの、ぼくの知らない所に変っていた。