小柴垣こしばがき)” の例文
崖下がけしたにある一構えの第宅やしきは郷士の住処すみかと見え、よほど古びてはいるが、骨太く粧飾かざり少く、夕顔の干物ひもの衣物きものとした小柴垣こしばがきがその周囲まわりを取り巻いている。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
野の宮は簡単な小柴垣こしばがきを大垣にして連ねた質素な構えである。丸木の鳥居などはさすがに神々こうごうしくて、なんとなく神の奉仕者以外の者を恥ずかしく思わせた。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ひざの上に色ある毛糸の丸い玉! 賑かな笑声が牛込の奥の小柴垣こしばがきの中に充ちた。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
こういう種々の原因がからみ合って、内部と外部との中間には、袖萩そではぎが取りつくろっている小柴垣こしばがきよりも大きい関が据えられて、戸を叩くにも叩かれぬくろがねの門が高くざされていたのであった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
舞台の両端には美しい花の咲き乱れた葵の茂みと小柴垣こしばがきがある。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
そこは簡単な小柴垣こしばがきなども雅致のあるふうにめぐらせて、仮居ではあるが品よく住みなされた山荘であった。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
山の春の日はことに長くてつれづれでもあったから、夕方になって、この山が淡霞うすがすみに包まれてしまった時刻に、午前にながめた小柴垣こしばがきの所へまで源氏は行って見た。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
螺旋らせん状になったみちのついたこの峰のすぐ下に、それもほかの僧坊と同じ小柴垣こしばがきではあるが、目だってきれいにめぐらされていて、よい座敷風の建物と廊とが優美に組み立てられ
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)