小匙こさじ)” の例文
素晴らしい茶碗に、銀の小匙こさじを添えて、卓の上へ順々に並べると、得ならぬ香気が客間をこめて、午後三時らしい心持にします。
判官三郎の正体 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
最初は茶塩気ちゃじおけといって梅干うめぼし漬物つけもの、まれには小匙こさじ一ぱいのしおということもあり、そうでなくとも腹を太くするほどの多量の物はともなわずに
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
お父様はお茶をお飲みの時、「ちょっとした菓子よりこの方がよい」と、和三盆わさんぼん小匙こさじに軽く召上るのですから、おみやげはほんのお愛想です。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
令嬢は舌の先でこの発明家の事業をたすける事が出来たなら、こんな結構な事はないと思つてゐたのだ。エデイソンは小匙こさじ乳鉢にゆうはちの薬料を一寸しやくつた。
……ちょうど茶の入った小匙こさじを口のはたに持って行ったところだったが、そのままの形でこわばってしまった。
小初は、もう料理のコースの終りのメロンも喰べ終って、皮にたまった薄青い汁を小匙こさじの先ですくっていた。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
多分それは鹽酸えんさん莫児比𣵀というものなのでしょう。瓶を電燈の前に持って行ってすかして見ますと、小匙こさじに半分もあるかなしの、極く僅かの白い粉が、綺麗にキラリキラリと光っています。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)