家元いえもと)” の例文
家元いえもとでは相変わらずの薄志弱行と人ごとに思われるのが彼を深く責める事や、葉子に手紙を出したいと思ってあらゆる手がかりを尋ねたけれども
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
静枝は——後に藤蔭ふじかげ流の家元いえもととなるだけに、身にしみて年をとった師匠の舞台の世話を見ている。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
各流能楽の家元いえもとから、音楽ずきの物持ち長者、骨董商こっとうしょうというような所を、根気よく万遍まんべんなくめぐって「鼓をご紛失ではござらぬかな?」こういって尋ねたものである。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たずぬるに長唄杵屋の一派は俳優中村勘五郎から出て、その宗家はよよ喜三郎また六左衛門と称し現に日本橋坂本町さかもとちょう十八番地にあって名跡みょうせきを伝えている。いわゆる植木店うえきだな家元いえもとである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)