安房守あわのかみ)” の例文
数日たつと、北条安房守あわのかみがまた訪れた。安房守は、秀忠の兵学師範をしている。このときも密談で、善鬼は何も聞けなかった。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
申上げるのは僭上せんじょうではございますけれど、お父うえ安房守あわのかみさまの御心底はいかがでありましょうか、世のありさまを
日本婦道記:忍緒 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
安房守あわのかみと任官して、まあ当代の傑物として、幕府を背負って立とうとか、立つまいとか言われるようになったのは、そもそもこの親の気違いから起っているのだ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ここの町よりただ荒川一条ひとすじへだてたる鉢形村といえるは、むかしの鉢形の城のありたるところにて、城は天正てんしょうの頃、北条氏政ほうじょううじまさの弟安房守あわのかみ氏邦の守りたるところなれば
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……それに、かつ安房守あわのかみ様より下渡さげわたされた五千両の軍用金で、銃器商大島屋善十郎から、鉄砲、大砲を買取り、鎮撫隊の隊士一同、一人のこらず所持しておる、大丈夫じゃ。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
安房守あわのかみから柳生宗矩むねのり様へ実情を申しあげ、お骨折りで、師の家名だけは、養子の手続きを取って、残ることに相成りました。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さ、いつごろ安房守あわのかみに叙爵したっけかな——トニカク、とびたかを産んだのか、いや、この親にしてこの子ありか、人間の万事はわからぬものだ、と神尾が思いました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
初名義邦よしくに、通称は麟太郎りんたろう、後安芳やすよし、号は海舟かいしゅう、幕末じゅう位下いげ安房守あわのかみとなり、軍艦奉行、陸軍総裁を経、さらに軍事取扱として、幕府陸海軍の実権を、文字通り一手に握っていたのが
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その日、沢庵は伊織をしりにれていた。赤城坂あかぎざかの北条安房守あわのかみの門へはいって行く。玄関わきのかえでがいつぞやとは見まごうほど紅葉している。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芝口の辻を北へ曲がり安房守あわのかみは悠々と歩いて行った。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこで、安房守あわのかみが選まれました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すでに、そこの式台には、左右に明るい燭台を備え、用人らしい者以下、安房守あわのかみの召使がずらりとを下げていた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安房守あわのかみはじっと耳を澄ました。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「はい。北条新蔵と仰有おっしゃいまして、北条安房守あわのかみの御子息——兵学を御修行なさるために、小幡先生のお手許に、長年お仕えをしているお方でございます」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)