安宅丸あたかまる)” の例文
と、こう、短気になった雲霧が、その仕事を深川の御船蔵につないである将軍家の安宅丸あたかまるに眼をつけて、入ったのが、失敗だった。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それからというもの、小金馬は八十八夜も待たずして、「安宅丸あたかまる」のカッパの吉蔵のように、「五井へ行こう、五井へ行こう」という。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
船藏ふなぐらがついちかくつて、安宅丸あたかまる古跡こせきですからな。いや、ういへば、遠目鏡とほめがねつたで……あれ、ごろうじろ——と、河童かつぱ囘向院ゑかうゐん墓原はかばら惡戲いたづらをしてゐます。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
にせ雲霧、いくら、親分乾分こぶんの義理立てかは知らぬが、死んでは、つまらんではないか。安宅丸あたかまるへ忍び入った時も、そちのほかに、もう一名、逃げおった者があるに違いない。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
汐留川しおどめがわの地先に新造船の安宅丸あたかまるが、花嫁のように幔幕まんまくのぼりに飾られてつないである。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、参覲さんきん交代の制度を厳密にした。また、安宅丸あたかまるその他のおおきな兵船を造らせた。また、武家法度をやかましく宣布した。また——大目付の職制を新たに設け、諸国に無数の隠密を放った。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)