婆娑羅ばさら)” の例文
のみならず、師直や道誉とならんで、洛中の三婆娑羅ばさらといわれていた男だけに、かえって、車副くるまぞいの人々へ、こう威たけ高に呶喝どかつした。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
婆娑羅ばさらの大神が祭ってある、あの座敷の古柱へ、ぐるぐる巻にくくりつけられて、松葉燻まつばいぶしぐらいにはされ兼ねますまい。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私生活では婆娑羅ばさら見得者みえしゃの彼でいながら、ときによっては目に見えないこんな舞台裏の骨折りも、彼はなんともおもっていない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、お敏が知ってからは、もう例の婆娑羅ばさらの大神と云う、怪しい物の力を借りて、加持かじや占をしていたそうです。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼の生の意味と欲望は、婆娑羅ばさらな道にあるだけだ。この世は、欲望の園であり、じぶんは花に飽かないあぶの大王だと思っている。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしお島婆さんがそれを狂言だと思った揚句、とうとう自滅したなんぞは、どう考えても予想外だね。これじゃ婆娑羅ばさらの神と云うのも、善だか悪だかわからなくなった。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もちまえの毒舌をしきりにもてあそぶ道誉にたいして、高氏もぐでんぐでんなていで、彼の婆娑羅ばさらな若入道ぶりを、手ひどく揶揄やゆしたりするのであった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「堀川のさる家よ。万珠、ちょっと、いつもの家へ立寄って、もう一献、婆娑羅ばさらと飲んで別れとしようぞ」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「むむ、そうかおぬしも、伊吹の婆娑羅ばさら天狗だったな、天狗なら天狗を知るはず。角力すもうしようッ、道誉」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……可惜あたらいのちだ。右馬介は武家奉公をやめ、これから先は何商売なとして金を儲け、都でしたい三昧の婆娑羅ばさらな生涯を送るつもりだ……。又太郎さま、おさらばでおざる
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道誉どのの無節操や婆娑羅ばさらぶりも、武門の風潮で、あのお方一個がずるくて驕慢きょうまんなわけでもない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、会合も、回をかさねること、すでに二十たびをこえ、そのつど顔ぶれもふえ、またさかんになるに従って、会後の婆娑羅ばさらな無礼講の遊宴も、いつか常例になっていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それまでは、飲むまいとしていた顔であったと分って、妓たちは凱歌がいかにはしゃぐ。こうなれば婆娑羅ばさらの本領である。高ノ師直のごとき、眼の中のチリでもないと、道誉は観る。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むしろ、尊氏から見て、警戒されていたのは、勝者の立場におごり、旧文化や貴族を侮辱することに惨酷なよろこびすら持っているほかの婆娑羅ばさら大名や武士どもではなかったろうか。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
婆娑羅ばさらな半面もよく気が合うし、わけて武将間の内輪さぐりにも、市井しせいの雑訴を知るうえにも、得やすからざる人物、最良な顧問役と、彼は見ている。いまも信じて疑わなかった。
臨済りんざいの一禅堂で、婆娑羅ばさら大名の道誉が晩年住んだ所だが、元より昔の宏大さはない。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやそんな人物ではない。婆娑羅ばさらなたちだが竹を割ったような男。せっかくなお召をと、さぞ無念がっておりましょう。また何も彼の不参が作戦上のさしつかえではなし、明日は手兵を
「——世間はおれを婆娑羅ばさらというが、おれもおよばぬ婆娑羅僧正ではないか」
あの婆娑羅ばさらどのだ、軍装も図ば抜けているだろうと思うのである。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちかごろ“婆娑羅ばさら”という流行語をしきりに聞く。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの婆娑羅ばさら大名がの。ムム、なるほど」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
婆娑羅ばさら
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)