娑婆気しゃばっけ)” の例文
旧字:娑婆氣
つむじ曲りが、娑婆気しゃばっけな、わざと好事ものずきな吾妻下駄、霜に寒月の冴ゆるの更けて帰る千鳥足には、殊更に音を立てて、カラカラと板を踏む。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思い切って娑婆気しゃばっけを漂わせ、幸い、最も手近なるところにがんりきというあつらえ向きの野郎がいるのだから
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
日本は巾着切きんちゃくきりの態度で美術品を作る。西洋は大きくてこまかくて、そうしてどこまでも娑婆気しゃばっけがとれない。まずこう考えながら席に着く。若い男は余とならんで、花毯のなかばを占領した。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ははあ、和尚さん、娑婆気しゃばっけだな、人寄せに、黒枠で……と身を投げた人だから、薄彩色うすざいしき水絵具の立看板。」
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども、その、しないという約束の裏をくのも趣向だろう。集った中にや、随分娑婆気しゃばっけなのも少くない。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なぐさみに、それを仕掛けたのは、次平じへいと云って、山家やまがから出ましたが、娑婆気しゃばっけな風呂番で、唯扁平ひらったい石のめんを打つだけでは、音が冴えないから、と杵の当ります処へ
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いい年をして娑婆気しゃばっけな、酒も飲めば巫山戯ふざけもするが、世の中は道中同然。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「でもね、娑婆気しゃばっけだの、洒落しゃれだの、見得だの、なんにもそんなわざとでなしに、しようと思って、直ぐあの中へ、頭からお宝を撒ける人は、まあ、沢山なんとほかには無い。——おこうさんばかりなんだよ。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)