威風いふう)” の例文
頼朝の営外に立っている兵たちは、小手をかざしながら、新しい味方の堂々たる威風いふうを、頼もしげに眺め合っていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人はすべて子孫の繁栄を祈るものであるかも知れぬが、別して女は、別して強烈沈静なる女は、現実的、肉体的な繁栄や威風いふうをもとめてやまないものである。北条政子と同じ意志がここにある。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
威風いふうあたりを払うというを豪傑ごうけつの理想とし、人の近づき得ざるところを偉いとしたから、偉がるものは、なるべく人を近づけぬ工夫をなし、あるいは傍若無人ぼうじゃくぶじんにして人を馬鹿にして独りで偉がった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
だから私は実に威風いふう堂々と、あの部屋を脱出していった。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
威風いふう堂々と新羅しらぎをおひき上げになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
端厳たんげん麒麟きりんのごとき左少将秀吉さしょうしょうひでよし。風格、鳳凰ほうおうのような右少将家康うしょうしょういえやす。どっちも胸に大野心だいやしんをいだいて、威風いふうあたりをはらい、安土城本丸あづちじょうほんまる大廓おおくるわを右と左とにわかれていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幾年いくねんかまえには、そこに、機山大居士信玄きざんだいこじしんげん威風いふうにまたたいている短檠たんけいがおかれてあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふしぎな怪物のごえがする。そして、すさまじいばたきがそこで聞えた。見ると、ひとつの岩頭がんとう金瞳黒毛きんどうこくもう大鷲おおわしが、威風いふうあたりをはらい、八方を睥睨へいげいしてとまっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)