如菩薩にょぼさつ)” の例文
媚嬌びきょうを含んだ声はまぎれもない御方ではないか。新九郎はこの如菩薩にょぼさつの本相を見極めんとして近づきながら、また昏沌たる謎の渦に巻き込まれてしまった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信切顔しんせつがおをして其人の秘密を聞き出しれを直様すぐさま官に売附けて世を渡る、外面げめん如菩薩にょぼさつ内心如夜叉にょやしゃとは女に非ず探偵なり、切取強盗人殺牢破りなど云える悪人多からずば其職繁昌せず
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
登竜門というものは、ひとを市場へ一直線に送りこむ外面げめん如菩薩にょぼさつの地獄の門だ。けれども僕は着飾った苺の悲しみを知っている。そうしてこのごろ、それを尊く思いはじめた。僕は逃げない。
ダス・ゲマイネ (新字新仮名) / 太宰治(著)
華厳経けごんきょう外面げめん如菩薩にょぼさつ内心ないしん如夜叉にょやしゃと云う句がある。知ってるだろう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
外面げめん如菩薩にょぼさつ内心ないしん如夜叉にょやしゃとは彼女等三人の事でなければならぬ。そうしてこの恐ろしい形容詞が、女に限られたものでなければ、の呉井嬢次と称する怪少年も、その仲間に数え入れなければならぬ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
三十二相円満な如菩薩にょぼさつ笑顔えがおそのままではないか。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)