奇観きかん)” の例文
旧字:奇觀
と、なんという奇観きかん、人造人間は、ちに、身体を曲げて車輪になるのがあるかと思うと、四五人横に寝て、鋼鈑こうばんとなるものもある。
親の死目しにめわなくてもいいから、これだけは是非見物するがいい。世界広しといえどもこんな奇観きかんはまたとあるまい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ばかな。町奉行に、何の警固がいるぞ。奉行自身、独り歩きの出来ぬような世間を、奉行が身に証拠立てて歩いたら、まことに、政道の奇観きかんといわねばならぬ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地球上の奇観きかんとちがって、宇宙の風景はあまりに悽愴せいそうで、見つけない者が見ると、一目見ただけで発狂するおそれがあるのですわ。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
田鍋課長の知っていることを帆村は知らず、帆村の知っていることで田鍋課長の知らぬことがあり、両人肩を並べて窓の中をのぞんでいるところは奇観きかんだった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
檻の中から、整列している人造人間の部隊を見下ろしたところは、奇観きかんであった。なんだか人造人間の部隊のために、あべこべにわれわれが檻の中に閉じこめられてしまったような錯覚さっかくをおこした。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)