失錯しつさく)” の例文
出来るだけ悪く造られてゐる。世界の出来たのは失錯しつさくである。の安さが誤まつて攪乱かうらんせられたに過ざない。世界は認識によつて無の安さに帰るより外はない。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
その咄嗟とつさ失錯しつさくをどういふ風にして繕つたか——ロチスター氏の動靜どうせいが、私にとつて重大な關係を持つ理由のある事柄であると、かりにも思ふその思ひ違ひを
彼のふところに眠る、娘のやうに大事な牝羊を持つた人が、誤つてそれを屠殺場とさつぢやうで殺したとしても、その人は、私が今自分のしたことを悔い歎く程には、その血なまぐさい失錯しつさくを悔いはしないだらう。
それはかねて門人の籍にゐる兵庫西出町にしでまち柴屋長太夫しばやちやうだいふ其外そのほか縁故のある商人に買つて納めさせ、又学生が失錯しつさくをするたびに、科料のかはりに父兄に買つて納めさせた書籍が、玄関から講堂、書斎へ掛けて
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
こはがつてゐますよ——あなたの自愛心が失錯しつさくを恐れてゐます。」