夭死ようし)” の例文
髪の毛でも送って来なければ、ほうむりようがなかった。せがれ夭死ようしして、頼みの綱の孫がまた、戦死した祖父のうちは、寂しそうであった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
年取って薄倖はっこうりょうの母すらも「亮は夭死ようしはしたが、これほどまでに皆様から思っていただけば、決してふしあわせとは思われない」
亮の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
化け物屋敷に夭死ようしするものが続出したり、変死者が出たりするのはこれがためで、不吉の家には必ずこの悪気が満ちている。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
十一月二十三日毅堂の長女ゆう夭死ようしした。谷中三崎さんさきの天竜院に葬られて玉梢童女と法諡をつけられた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
父はまた、長男でわたくしの兄に当る文学好きの青年が大学を出ると間もなく夭死ようしした。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それがしに七人兄弟中に、拙者は罪人、芳は夭死ようし、敏は唖に否様ぶざまの悪い様なものなれど、またあと四人はかなりに世をすごせられ、特に兄様、そもじ、小田村は両人ずつも子供があれば不足は申されぬ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
就職後間もなく誰かから自分の前任者が二人まで夭死ようしをしたこと、その原因がその工場で発生する毒瓦斯ガスのためらしいという話を聞き込んで、ひどく驚きおびえて
KからQまで (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
もし、その競争に敗を取らば、必ず己の健康を失い、疾病を起こし、ついに短折夭死ようしするに至る。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
くすさんも、この不良と目された不幸な青年も夭死ようししてとくの昔になくなったが、自分の思い出の中には二人の使徒のように頭上に光環をいただいて相並んで立っているのである。
読書の今昔 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
長男は九年前に病死し、四男はそれよりずっと前、まだ中学生の時代に夭死ようしした。昨年また亮が死んだので、残るはただ三男のじゅんだけである。順はとくにいでて他家を継いでいる。
亮の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
自分は夭死ようしするのだなと思った事はあったが、死が恐ろしくてそう思ったのではない。
枯菊の影 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)