天勝てんかつ)” の例文
「ホホホホホ、天勝てんかつだって、トランクに入れるものはたいていきまっているじゃないの。まあいいから、石ころの始末を手伝いなさいよ」
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その大胆巧妙さといったら実に舌を捲くばかりで、天勝てんかつの手品以上の手練を持っているんだからトテモなまやさしい事で捕まるものでない。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私は5+5を羽左衛門うざえもんがやると100となったり、延若えんじゃくがやると55となったり、天勝てんかつがやると消えせたりするような事をおおいに面白がる性分しょうぶんなのである。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
庸三の末の娘をつれて二人で浅草へ天勝てんかつの魔術を見せに行った帰りに、上野で食事をしてからちょっと立ち寄ったのだったが、庸三は一般ジャアナリストの外からの排撃と
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それにくらべれば魔術師の天勝てんかつは、さびしいかな天勝といいたい。彼女はいつまでも妖艶に、いつまでもおなじような事を繰返している。彼女の悲哀は彼女のみが知るであろう。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
科学に対して丁度天勝てんかつの奇術に対するような興味を起さすおそれが充分ある。
科学と文化 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
……エライもんだなあ婦長さんの魔法は……まるで天勝てんかつみたいだ。有難い有難い。お蔭でこれから安心して眠れる。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)