大黒頭巾だいこくずきん)” の例文
大黒頭巾だいこくずきんでもかぶった隠居がにこにこしながら、それを眺めている。——西鶴の『永代蔵』にでもありそうな、めでたい蔵開である。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
髪は大黒頭巾だいこくずきんかぶったような耳隠しの束髪にい、手には茹章魚ゆでだこをぶらさげたようなハンドバッグを携え歩む姿を写し来って
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
白の大黒頭巾だいこくずきん、白の詰襟服、白のエプロン、大黒さまのように肥った顔が、異様に緊張している。この船のコックである。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ほおの木歯きばの足駄をガラガラ。と学校の帰りにやあらん。年ごろはおのおの十五ばかりなる二三人の少年。一人は白き帆木綿ほもめんのかばんをこわきにかい込み。毛糸織りの大黒頭巾だいこくずきんいただきたる。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
白砂の小山の畦道あぜみちに、菜畑の菜よりも暖かそうな、おのが影法師を、われと慰むように、太いつえに片手づきしては、腰を休め休め近づいたのを、見ると、大黒頭巾だいこくずきんに似た、饅頭形まんじゅうがたの黄なる帽子を頂き
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
扇地紙おうぎじがみふすまうしろにして大黒頭巾だいこくずきんかぶり荒きしまはかまはきたる座頭が手につえを持ち、片足をば足袋たびの裏を見するまで差上げて踊れるその姿の軟かにしてまたいきおいあるさま
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)