大牢たいろう)” の例文
彼は一日、成都郊外にある先帝の霊廟れいびょうに詣でて、大牢たいろうの祭をそなえ、涙を流して、何事か久しく祈念していた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——幸助という男は大牢たいろうで、おじさんといっしょにくらし、身の上話なんぞもしたんでしょう、そこからこんどのような話をでっちあげたんだと思います」
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それは小伝馬町に面した大牢たいろうの一角を、無償で父にくれようといった当時のことを母がなじったのだ。
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「だが、こいつは人間業じゃないぜ。戸締りは伝馬町の大牢たいろうのように厳重だ、開いているのはお勝手の引窓がたった一つ。そんなところから出入りするのは、けむりと風だけだ」
小伝馬町大牢たいろうの御用のようにばかり書きましたが、それも幼時の感じを申述もうしのべただけです。
「お蔭で我々が久し振に大牢たいろうあじわいに有り附いたのだ。酒は幾らでも飲ませてくれたし、あの時位僕は愉快だった事は無いよ。なんにしろ、兵站へいたんにはあんまり御馳走ごちそうのあったことはないからなあ。」
鼠坂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大牢たいろうへ送ることになるだろうときめつけた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)