大火鉢おおひばち)” の例文
障子しょうじに近い大きな白熊の毛皮の上の盛上るような座蒲団ざぶとんの上に、はったんの褞袍どてらを着こんだ場主が、大火鉢おおひばちに手をかざして安座あぐらをかいていた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
部屋のなかの大火鉢おおひばちには、炭火すみびがかっかっとおこっていて、あたりいちめん、肉のこげるようなにおいが充満じゅうまんしているのだ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
其処そこしきものには熊の皮を拡げて、目のところを二つゑぐり取つたまゝの、して木の根のくりぬき大火鉢おおひばちが置いてあつた。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
炊事夫すいじふ並木夫婦なみきふうふに何かと世話をやいてもらって、入浴をしたり、広間に集まって食事をしたり、各室で大火鉢おおひばちをかこみながら、各地のおみやげを出しあって茶をのんだりするだけのことだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
惜し気もなくあか大火鉢おおひばちちまけたが、またおびただしい。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)