夕方ゆうかた)” の例文
五百らが夕方ゆうかたになると、長い廊下を通って締めにかなくてはならぬ窓があった。その廊下には鬼が出るといううわさがあった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
棄児にしたかどがあるから、今さら名告なのりかね、余所よそながら贔屓にして親しむのに相違ないと思う折から、去る九日こゝのか夕方ゆうかた夫婦して尋ねて来て、親切に嫁を貰えと勧め
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
丁度四歳の初冬の或る夕方ゆうかた、私は松や蘇鉄そてつ芭蕉ばしょうなぞに其の年の霜よけをし終えた植木屋のやすが、一面に白く乾いたきのこび着いている井戸側いどがわ取破とりこわしているのを見た。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
女「多分昼前からまいるように申して居ったように聞きました、お帰りは確かに夕方ゆうかたと申しました」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
る夏の夕方ゆうかたに、雑草の多い古池のほとりで、蛇と蛙のいたましく噛み合っている有様ありさまを見て、善悪の判断さえつかない幼心おさなごころに、早くも神の慈悲心を疑った……と読んで行くうち
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
すると翌六日の夕方ゆうかたに、稻垣小左衞門という粟田口國綱のお係りの役人が、年頭のお帰りがけと見えて、麻上下あさがみしもの上へどっしりとした脊割羽織を召し、細身の大小を差して
夕方ゆうかた、父親につづいて、淀井よどいと云う爺さんがやって来た。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
名「夕方ゆうかた、人のうちへ来るでもねえが、急用あってめえりました」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)