売物うりもの)” の例文
旧字:賣物
と清藏も根が情深い男だから丹誠をしてやります所から、療治は下手だが、やすいのを売物うりものに客へ頼んで療治をさせるような事になりました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
使って居た女中じょちゅうは、江州ごうしゅう彦根在の者で、其郷里地方きょうりちほうには家屋敷を捨売りにして京、大阪や東京に出る者が多いので、うその様にやすい地面家作の売物うりものがあると云う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
水戸の御家人や旗本の空屋敷あきやしき其処此処そこここ売物うりものとなっていたのをば、維新の革命があって程もなく、新しい時代に乗じた私の父は空屋敷三軒ほどの地所を一まとめに買い占め
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
辻売つじうりる処売物うりもの台架だいたなもみな雪にて作る、是を里言りげんにさつやといふ。○獣狩けだものがり追鳥おひとり。○積雪せきせついへうづかへつ寒威かんゐふせぐ。○なつ山間やまあひの雪を以て魚鳥うをとりにく擁包つゝみおけば敗餒くさらず。
未知の国売物うりもの——じつに空前絶後ともいう奇怪なことである。まして、国というからには単純な未踏地ではあるまいが、まさか、そんなものがこの地上にあろうとは思われない。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「生意気なことを言うな、安かろうと高かろうとこっちの売物うりものだ」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)