執拗しつあう)” の例文
それは、若松屋の妾お扇は、名題の『小便組』だといふ噂を、執拗しつあうに小意地惡く言ひふらした上、町の惡童共に菓子などをやつて
彼は都会から、生活から、朋友ほういうから、あらゆる色彩、あらゆる音楽、その種のすべてから執拗しつあうに自己を封じて、ぢつと自分の小さな世界に黙想してるやうな冷たい暗い詩人なのであつた。
哀しき父 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
錢形平次の執拗しつあうな疑ひに對して、嬌瞋けうしんを發した姿です。それは怒つた孔雀くじやくのやうな、不思議な氣高さとはなやかさを持つたものです。
それは言ひやうもなくいぢらしい姿でしたが、平次は日頃にもなく執拗しつあうに、この泣き濡れる娘から、何にか引出さうとしてゐるのでした。
少年はせい/″\十四、五、あまりかしこさうではありませんが、丈夫さうで、執拗しつあうで、頑固らしいところのあるのは、平次の註文通りでした。
三千石の裕福な殿樣が、吹けば飛ぶやうな裏町の小間物屋に加へた壓迫の手は、殘酷で執拗しつあうで惡辣を極めたのでした。
うして源次郎の巧妙な詭計きけいも、門太郎の執拗しつあうな情熱も、みにくい下男のひたむきな純情に押し流されてしまつたのです。
物柔かで戰鬪的で、押しが強くて金があつて、その上執拗しつあう無比な働きもので、大黒屋徳右衞門は、敵に取つては全く恐ろしい男だつたかも知れません。
果して、吾妻屋永左衞門と、大井久我之助の鞘當さやあては、一應表向きは納まりましたが、二人の心持は執拗しつあうに深刻に、行くところまで行き着いてしまつたのです。
猪之助は無造作に言ひきつて、尚ほも主人の徳右衞門に、執拗しつあうな質問を續けようとするのです。
銭形平次捕物控:260 女臼 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
この探索は執拗しつあうに熱心に續けられましたが、人足共をヘトヘトに疲らせ、溜池を滅茶にかき濁らせただけ、錢箱は愚か、古下駄一つもあがらず、寶雲齋坊、眞つ先に立つて
父親玄龍の手で繃帶ほうたいしたまゝですが、傷は後ろから一と突き、拳上がりに心の臟を刺したらしく、手もとが狂つて傷口がさゝくれてゐる癖に、間違ひもなく娘の命を奪つた執拗しつあうさが
お六は執拗しつあうからみ付いて、その手は默然として壁の方を向く平次の肩に掛りました。
品を替へめ立てますが、お吉は執拗しつあうに口をつぐんで、悲しくも眼を伏せるばかり、まさか拷問がうもんにかけるわけにも行かず、二三日の後には、石原の利助も少し持て餘し氣味になりました。
竪川筋のとある材木小屋につれ込まれたお登世が、春松の執拗しつあうな邪惡な戀の前に、あはや命も處女も奪はれかけて居るところへ、若旦那の久太郎は、鐵砲玉のやうに驅け込んだのです。
十八娘の死骸は、多少の變化があるにしても、毛程の傷も斑點はんてんもないことはもとの通りで、さすがの平次も、この執拗しつあう冒涜ばうとくに自分を耻ぢ恐れて、默つて引下がる外はなかつたのです。
生得しやうとくの大きな聲でわめき散らすと、さしもに執拗しつあうな野次馬も、嗅ぎわけられる恐ろしさから逃れようとしたか、一人減り、二人歸り、人垣は後ろの方からゾロゾロと崩れて行くのでした。
二人はそれつ切り口をつぐみましたが、中の爭ひは、深刻に、執拗しつあうに續きます。
それは平次も持て餘した程の、無智で、執拗しつあうで、氣違ひ染みた熱心さでした。
歸る途々、八五郎の執拗しつあうな問ひに答へて、平次は斯う説明してくれました。
矢を誂へたのは意外にも跡部滿十郎、そして近頃跡部滿十郎に引取られたお頼は、滿十郎の執拗しつあうな戀に驚いて、ツイ一昨日、芝の遠い知合を辿たどつて逃げて行つたことまで明かになつたのです。
入口にねばつて、女房のお靜を手古摺てこずらせてゐる中年男があつたのです。その調子は慇懃いんぎん朴訥ぼくとつでさへありましたが、押しが強くてわけがわからなくて、てこでも動かない執拗しつあうなところがあつたのです。
杵太郎は、何を考へたか、押し返して執拗しつあうに言ふのです。
執拗しつあうな怨を抱くものゝ仕業といふことになります。
斯うなると小豆澤小六郎は、執拗しつあうで頑固でした。
平次は尚も執拗しつあうにガラツ八を追及します。
平次は日頃になく執拗しつあうからむのです。
八五郎は執拗しつあうに喰ひ下がりました。
平次は妙に執拗しつあうに突つ込みます。