垣覗かきのぞ)” の例文
しかし、寧子ねねのことに限っては、彼のそうした賢い思慮と、彼の愚かな垣覗かきのぞきの心理とが、一箇の彼という中に、べつべつに働いていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それなら自力でそれをきわめ得るかと云うと、まあ盲目めくら垣覗かきのぞきといったようなもので、図書館に入って、どこをどううろついても手掛てがかりがないのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この指一本、妙の身体からだかくした日にゃ、按摩あんまの勢揃ほど道学者輩がつえを突張って押寄せて、垣覗かきのぞきを遣ったって、黒子ほくろ一点ひとつも見せやしない、誰だと思う、おい、己だ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、まったく性に合わないと見えて、いまだにとんと眼くらの垣覗かきのぞきさ。」
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
むかしながらのスパルタ的なる鞭の訓練ちらと垣覗かきのぞきして、あれではお弟子が可愛さうだと、清潔の義憤、しかも、酸鼻といふ言葉に據つて辛くも表現できる一種凌壯の感覺に突き刺されて、あ
先生三人 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
盲目めくら垣覗かきのぞきよりもそッと近い、机覗つくえのぞきで、読んでおいでなさった、書物しょもつなどの、お話もうかがって、何をなさる方じゃと言う事も存じておりますが、経文きょうもんに書いてあることさえ
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)