圧潰おしつぶ)” の例文
旧字:壓潰
が、渠は怎したものか、それを胸の中で圧潰おしつぶして了つて考へぬ様にした。横山助手は、まだ半分しか出来ぬと云ふ『野菫』と題した新体詩を出して見せた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それらはきびしく僕に立ちむかって来た。僕はそのために圧潰おしつぶされそうになっているのだ。僕は僕にたずねる。救いはないのか、救いはないのか。だが、僕にはわからないのだ。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
しかしよしや大智深智だいちしんちでないまでも、相応にするど智慧ちえ才覚が、おそろしい負けぬ気を後盾うしろだてにしてまめに働き、どこかにコッツリとした、人には決して圧潰おしつぶされぬもののあることを思わせる。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
嫉妬しっともあるかもしれない、たしかに、森とおいちとをひとつにした想像は、呼吸を止められ、胸を圧潰おしつぶされるような苦しさだった。心理的であるよりもはるかに直接な、肉体的な苦悶であった。
つばくろ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
圧潰おしつぶした様に二列ふたならびに列んだ茅葺の屋根、其処からは鶏の声が間を置いて聞えて来る。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)