囲者かこいもの)” の例文
心の中にはこれから先毎晩こういう風に千代香を囲者かこいものにしてからの楽しさのみが、かえって切ないほど果てしもなく想像されるのであった。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
知らないで、うんとさえ云えば、立派な旦那が附いて、三十円るというのに、まさか囲者かこいものには成らないと云うのだよ、何ういう訳だか、本当に馬鹿気ばかげているよ
用事の第一はお千代の身を禿頭はげあたま囲者かこいものにするためには、急に家をさがして、今日引越したばかりの貸間を引上げる事
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
っかさんにも旨い物を食べさせ、いものを着せられ、お前も芝居へもかれるから、私の金主きんしゅで大事の人だから、の人の云うことをうんと聞いて囲者かこいものにおなりよ
色は白けれど引臼ひきうすの如き尻付しりつき、背の低くふとりたる姿の見るからにいやらしき娘こそ、琉球人の囲者かこいものとの噂高くして、束髪に紫縮緬の被布ひふなぞ着て時々月琴げっきん稽古けいこに行くとは真赤な虚言うそ
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)