“因（おこ）” の例文
何しろすさまじい権幕でしたからねえ——事の因（おこ）りってのは、何ァに大した事じゃありません。大体あの狭山って男はひどい好色漢でしてね。
象牙の牌 (新字新仮名) ／ 渡辺温(著)
棋盤（きばん）の上での戯れによく使われるが、因（おこ）りはやはり兵学上の語だろうと思う。聖賢の語は、こう率直でない。
新書太閤記：09 第九分冊 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
なるほどあいつはしようのない奴（やつ）さ。しようのない奴には違（ちがい）ないけれども、あいつがこうなった因（おこ）りをよく考えて見ると、何でもないんだ。ただ不平だからだ。
明暗 (新字新仮名) ／ 夏目漱石(著)