四天王してんのう)” の例文
「そもそも、つつしみ、うやまって申したてまつるは、かみ梵天ぼんてん帝釈たいしゃく四天王してんのう、下界に至れば閻魔法王えんまほうおう……」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
松明たいまつったる巡査とほか数名の勇者は、頼光らいこう四天王してんのう大江山おおえやまったような態度で、再び窟へ引返ひっかえした。巡査がふごに乗って降りた。の者も順々に降りた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
このガランとした壇上の四隅に埃にまみれて四天王してんのうが立っているのである。しかも空前絶後と称せられる貴い四天王が。それを見ると全く妙なアイロニイを感ずる。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
もと穴山梅雪あなやまばいせつ四天王してんのうのひとり佐分利五郎次、きさまの法師首ほうしくび剣先けんさきにかけて、亡主ぼうしゅ梅雪の回向えこうにしてくれる、一うちの作法さほうどおり人まじえをせずに、勝負をしろ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女人自身のいう所をことごとく真実と認めるのは、——わたしはこの二十年来、こういう疑問を抱いている。あの頼光らいこう四天王してんのうはいずれも多少気違いじみた女性崇拝家すうはいかではなかったであろうか?
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
四隅よすみに立っている四天王してんのうは簡素な刻み方で、清楚な趣があって、非常にいいものである。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)