四境あたり)” の例文
白く谷川がさらさらとながれている。その辺は一面に小石や、砂利で、森然しんとして山に生い茂った木立が四境あたりを深くとざしている。
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
外の雪は止んだと見えて、四境あたりが静かであった——炬燵こたつに当っていて、母からいろんな怖しい話を聞いた。その中にはこんな話もあったのである。
北の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しばらくすると人足が杜絶とだえて四境あたりが静かになったかと思うと、直ぐ戸に近く草鞋わらじの音がして、歌をうたって行く。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私は気味が悪かったが、眼をふさいで口の中でいちッ、ッとかけ声を出して、みずから勇気をはげまして駆け出した。私の下駄の力の入った踏み音のみが、四境あたりの寂しさを破って響いた。
黄色い晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)