噛締かみし)” の例文
かれしばらあひだいてはまたんで/\噛締かみしめてもれぬあるものたいするやうな焦燥じれつたさと
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
セグリ上げて来る涙を奥歯で噛締かみしめた。静かに弟の両腕を引離して寝台の上に座り直した。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あの人を箸にも棒にもかからぬように言うのは、それは、あの人を噛締かみしめていないからで、その悪いところだけを避けて、良いところを附き合えば、ずいぶん力になる人であると思っている。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それゆえ、念に掛けて笑うまいとはしながら、おかしくて、おかしくて、どうもたまらず、唇を噛締かみしめ、まゆ釣上つりあげ、真赤になッてもこらえ切れず、つい吹出して大事の大事の品格を落してしまう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
彼は突然に眼を閉じ、唇を噛締かみしめて、雑木藪ぞうきやぶの中を盲滅法めくらめっぽう驀進ばくしんし初めた。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)