嘈々そうそう)” の例文
そう音色ねいろ悲愁ひしゅうな叫び、または嘈々そうそうとしてさわやかに転変する笙の余韻よいんが、志賀しがのさざ波へたえによれていった——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その弾奏は自慢だけに、堂にったところがあります。大絃だいげん嘈々そうそうとして、急雨のように響かせるところは響かせます。小絃しょうげん切々せつせつとして、私語のように掻き鳴らすところは鳴らします。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
発矢はっしと、ばちの音、聞くものの魂をさながらに身ぶるいさせた。大絃たいげん嘈々そうそうとして急雨のように、小絃は切々として私語しごのごとしという形容ことばのままだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嘈々そうそうとしてやまず、呂々りょりょとして尽きるところを知らぬ一節切ひとよぎりの吹きも、今はうつつであるだろうか。吹いては一歩、流しては一歩、夜旅の興趣と、おのれの芸味に酔いつつ来るのだろうか。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曲はすすみ、大絃たいげん嘈々そうそう、小絃は切々せつせつ——
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)