ほん)” の例文
が、その女は何者である乎、現在何処にいる乎と、切込んで質問すると、「ほんの通り一遍の知り合いだからマダ発表する時期にならない、」
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
学問の進歩が極点に達した時なら知らず、何も彼も多くは疑問として存してほんの理窟の言現いひあらはし方を少しづゝ違へた位で総て研究に属してゐる今日では学者と無学者とは相去る事幾何いくばくも無い。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
「自分は文人でない」と文学とは絶縁したつもりでいたから、ツルゲーネフを訳したのもほんの一時の融通のための拠ろないドラッジェリーで、官報局で外字新聞を翻訳した時と同じ心持であった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
『金色夜叉』については小波もしばしば弁明しているし、私も度々紅葉から聞いているが、ほんの発端をこの事実から思付いたという位に過ぎんので、小波をモデルとしたというのは全然虚伝である。