唐土とうど)” の例文
これは唐土とうどから伝来の品で、昔御先代の昭宣公が、冬になると召しておられたものですが、今の左大臣はまだ年がお若く、斯様なものを
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
景蔵らの目にはさながら剣を抜いて敵王の衣を刺し貫いたという唐土とうど予譲よじょうおもわせるようなはげしい水戸人の気性きしょうがその紙の上におどっていた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この話の半分似た口碑は、日本の全土に分布し、関西はもっぱら麦の種だが、奥羽は一般に稲を天竺てんじくまたは唐土とうどから、そっと持ってきた話として伝わっている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
七草なずな、唐土とうどの鳥が——の唄に合わせて、とことん! とことん! と俎板まないたを叩く音が、吉例により、立ち並ぶ家々のなかから、ふし面白く陽気ようきに聞えて来ていた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
恋々れんれんたる離別は龍顔りゅうがんをかきくもらせてはいたが、ふと、幾多の唐土とうどと帝王の例などもお胸をかすめたことであろう。国と女——その比重へこたえるような語気であった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「借金取りや唐土とうどの鳥には驚かねえが、——こいつは全く変ですぜ、親分」
奈良朝以後に唐土とうどから伝えられた密教そのものがインド教に影響された証拠だと言った人もある。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
群雄割拠ぐんゆうかっきょの小国と小国とが戦って大国となり、大国と大国とが戦って、かの唐土とうどの六国や三国のごとき対立の世代になり、ついには二大強国のふたつの世界にまでなってくる
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど唐土とうどの小説にある冥宮めいきゅうのような後生の使者が、三人づれで人を取りにきたり、または寿命の帳面に照らして死期をきめたりするというが、その鬼が島の入口というのは
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)