呼覚よびさま)” の例文
たまたま窓の外に歌う左官の歌に霊感を呼覚よびさまされて、「弦楽四重奏曲第一番ニ長調」の有名な「アンダンテ・カンタービレ」を作ったりした。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
ふッと眼を開けば何事ぞ、らちもない一場の夢はここに尽きて老いたる妻がおのれを呼覚よびさましているのであった。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
顔色かおつきが、ぐっすり寝込んだ処を、今ので呼覚よびさまされて、眠いに迷惑らしい様子もないので
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると後ろにトンカタントン……、奇妙ににわかに自分を呼覚よびさますかのような音がした。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
またその道すがら横手はるか幸橋さいわいばし見附みつけを眺めやった御郭おくるわそとの偉大なる夕暮の光景が、突然の珍らしさにふと少年時代の良心の残骸ざんがい呼覚よびさましたというよりほかはあるまい。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
けれども、直ぐに寐入ねいったものの呼覚よびさまされる時刻でない。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)