吐月峰はいふき)” の例文
初夏のけ除け、とぐろを巻いた縁側から、これも所在なく吐月峰はいふきばかり叩いている平次に、一とかど言い当てたつもりで声を掛けたのでした。
……聞いている喜左衛門きざえもんしわの深い顔に、思わず明るい微笑がみなぎると、かれは吸いかけた火玉をプッ——と吹いて、ついで吐月峰はいふきのふちをとんとたたいた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
といいながら、器用に、ポンと音をさせて煙管キセル吸殻すいがら吐月峰はいふきへはたいた。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
しずかな部屋に、ぽんと吐月峰はいふきの音が鳴った。そして老人が二服目の刻みを詰めて、雁首がんくびしりで煙草盆の火をさぐっているあいだに、美佐子は黙って席を外して、二階の梯子段はしごだんを上って行った。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ポンと、露八は吐月峰はいふき煙管きせるの首をつよく当てる。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葛根湯かつこんたうを飮ませると言つて、藥を吐月峰はいふきに捨て、その後で殺されたやうに見せるために、いろ/\の細工をした。
平気の平左で、帯のあいだから小意気な煙管を取り出し、一服つけては、ポンとはたく吐月峰はいふきの音。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
吐月峰はいふきにおなり」と云えば直ちに畏まって口を開く。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
葛根湯を飲ませると言って、薬を吐月峰はいふきに捨て、その後で殺されたように見せるために、いろいろの細工をした。
閑山は出もしない、せきをして、吐月峰はいふきを手にした。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
長押なげしの裏、押入、煙草盆——と丁寧に見て來た上、吐月峰はいふきを覗いて何やらに落ちない顏をしてをります。
長押なげしの裏、押入、煙草盆——と丁寧に見て来た上、吐月峰はいふきを覗いて何やらに落ちない顔をしております。
そのくせ、銀キセルだけは、いささか、持ち重りのしそうなのを、吐月峰はいふきにたくましい音を立てる。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「宵から暁方まで三番打ったそうですよ。引っ切りなしに石の音がして、それに吐月峰はいふきを叩く合の手が入るんで、寝付かれなくて弱りました、——これは内証ですがネ、親分」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ガラッ八は吐月峰はいふきをやけに引っぱたくと、煙管きせるを引いて物語らんの構えになります。
八五郎の話のテムポの遲さにじれて、平次はやけに吐月峰はいふきを叩きました。
八五郎の話のテンポの遅さにじれて、平次はやけに吐月峰はいふきを叩きました。
話の奇っ怪さに、平次もツイ吐月峰はいふきを叩いて膝を進めました。
「本当に酒を呑んだのは、吸物椀と盃洗はいせんと、吐月峰はいふきさ」